シェムリアップ

シェムリアップ(最初の記録は1909年)は、カンボジアにおけるアンコールへの「入口」として広く見なされているが、町そのものには生活の積み重なりが生む確かさがある。暑さのなかに低層の街並みが広がり、市場や寺院の境内がカフェ通りのすぐ近くに寄り添う。トゥクトゥクはフランス統治期の名残や中国系の店先のあいだをすり抜けていく。リズムは、夜明け前に遺跡へ向かう出発から、気のおけない社交が続くゆったりした夜へと揺れ、記念碑的なものが日常のすぐそばにあるのがこの町の特徴だ。アイデンティティはクメール帝国の長い影の中にあり、同時に、近年のカンボジアが経験した動揺と回復の数十年が、いまなお町の見せ方を形づくっている。観光は経済の大きな原動力で目に見える変化ももたらすが、地元の暮らしは手仕事、舞台芸能の伝統、そして淡々と続く日常の仏教を軸に集まっている。食もまた実用的で共同的で、香草、川魚、じっくり煮込むカレーが基調になる。